2019年前期および2019年後期に幹事長を務め、2020年前期幹事長を務める奥薗裕太会員にインタビューを行いました。聞き手は報道担当事務官です。
Q1. 生い立ちについて教えて下さい。
東京に生まれ、中学校を卒業するまでは東京で暮らしていました。小学校の頃は、学校に面白みをあまり見いだせませんでしたが、小学二年次に芥川龍之介の『魔術』を読む機会があり、その内容に衝撃を受けてからは小説に興味を持ち、卒業まで机の下で太宰治や坂口安吾を読むような小学生でした。中学校では一転して本の虫というよりは、同級生と遊ぶことが多かったように記憶しています。中学校を卒業後、元々興味のあった留学が出来ることとなり、カナダの州立高校に卒業まで留学しました。高校在学中は、カナダの自由な教育制度が肌にあっていたこともあり生徒会に加入しました。幅広い科目を選択することができたので、興味のあった写真や美術の科目を中心に履修していました。
経歴的には政治の世界と関わることは殆どなく、むしろ文学や美術の領域に関心のある生徒でしたし、今でもそうかもしれません。実際、中学の頃から高校三年生の途中までは、美術大学か文学部へ進学するつもりでした。しかし、留学中にJ・S・ミルの『自由論』を読み、その時に「自由とは何か」という問いが自分の中に浮かんだことや、当時カナダで性的少数派への差別の法規制についての議論が活発になっていたこともあり、正義や自由とは何かという問いの答えを学びたいと思い、それらの分野に関連する法哲学を学ぶことができる法学部に入学しました。
Q2. 雄弁会に入った理由と雄弁会の良さ
雄弁会に入った理由は、演説がしたかったからです。留学時に、英語の演説を聞く機会が何度かあったのですが、日本語の演説には英語の演説に比べて感情を揺さぶるような演説が少ないことを感じ、人の感情を動かせるような演説をしてみたいと思い、雄弁会に入会しました。雄弁会は、政治家志望が多いというイメージがどうしても付きまといますが、政治家志望でなくても雄弁会に入る人は多いということは知っていただきたいと思います。
雄弁会の良さの一つに、様々な考え方を持った会員が、それぞれの主張をもって議論できる空間があるということが言えると思います。あまり本音で議論することの出来る場所というものは少ない時代ではありますが、雄弁会にはまだその要素が残っていると考えていますし、そういった会員同士の自発的対話こそ、最も大切にしなければならないものであるとも考えています。そういった意味で、活動が全体で集まって何かすることに限らないのは雄弁会の魅力だと考えています。
Q3. どのような雄弁会にしたいかという意気込み
雄弁会は百年以上前に創設された歴史のあるサークルですが、どのような活動をしていたかについては、歴史の中で大きく変わってきましたし、現在の雄弁会も変革のさなかにあります。そのような状況の中、この会の本質的な何かを見つけようとする方も多いですが、私は、雄弁会が大学のサークルであるという性質に注目した上で、今の時代に適合した持続可能な活動モデルを作成することを目標としています。そして、雄弁会を会員にとって、有機的活動が可能となる場所にしたいと考えています。結局、私は雄弁会においては幹事長や幹事会がこうしろと活動を引っ張るよりも、横のつながりの会員同士が自発的に活動することが理想であると考えているので、どうすればその土台を構築することが出来るかということが、私の中での課題となっています。また、昔の名残で体育会系の要素がまだ残っている節もあるので、体育会系ではない学生にとっても、どのようにすればもっと活動しやすい場所に出来るかということも模索しています。
Q3. 最後に一言
「たいせつなことは、目にはみえない。」これは『星の王子さま』の中でもっとも有名な一節です。歴代の先輩方が厳かな言葉を残していますが、私はこれを選びました。『星の王子さま』は、一見子供向きの本のようにみえますが、ある程度成長してから読んではじめてこの本の良さが分かってくる気がしています。この一節は様々な解釈を許しています。友情や愛などの目にみえないものの大切さを語っているという読み方もあれば、資本主義社会や、物質主義的生き方への批判とする読み方もあります。
なんでもかんでも無理矢理数値化しようとしたり、論理的、実証的、または効率的でないとみなされるものは軽視されたりしがちな現代社会に我々は生きています。そのような社会の中で生きていこうとすると、そうした風潮に迎合していく必要も出てきてしまいます。ただ、それでも、「キノコ」にならないように、目ではみることの出来ない、自分自身にとっての「たいせつなこと」を感じることが出来るように生きていきたいと思っています。