2024年8月から第153代幹事長を務めている平栁晴翔会員にインタビューを行いました。
・自己紹介をお願いします。
埼玉で生まれ育ちました。地元の小中学校を卒業した後は、県公立の男子校に進学し、室内楽部に所属していました。本来、室内楽は、1パートに1人の奏者しかいないものなのですが、だいたいの高校の室内楽部は、実質オーケストラ部のようなもので、1パートにそれなりの数の奏者がいるものです。しかし、私の代の室内楽部は、4人しか入会せず、 本当に1パートに1人の奏者しかいなかったため、「一人でも欠けたら演奏ができない」という緊張感の中、バイオリンを担当することになりました(笑)。また、2年の8月ごろから3年の同じ時期まで1年間部長を務めました。
高校を卒業した後は、早稲田大学政治経済学部政治学科に進学し、雄弁会に入会しました。雄弁会では、2024年2月から研究幹事を務め、同年8月から現職です。
・雄弁会に入った理由を教えてください。
雄弁会に入ったのは、社会問題や政治について真摯に議論できる場が欲しかったからです。思えば、小学校高学年から社会科の授業に特に興味があり、高校入学時には政治に関心がありましたが、その上で、高校時代のある経験が、雄弁会に入る直接の契機になったと考えています。
その経験こそが、社会問題や政治について真摯に議論できる場がない、というものでした。前述の通り、高校入学時には政治に関心があったため、高校では、そのインプットとアウトプットの活動に積極的に取り組みたいと考えていました。インプットの活動―新聞や本を読んで政治知識を高めたり、街頭演説を聞きに行って実際の政治の熱量を感じたりする活動―は、一人で行うことが容易です。高校在学中には、「保守」という言葉が濫用されている現状に危機感を覚え、「保守主義とは何か」(宇野、2016)などを読んで、 バークの保守主義を勉強しました。また、2021年衆院選と2022年参院選では、首都圏を中心に複数の政治家の街頭演説を聞きに行くなど、インプットの活動はある程度行うことができました。しかし、アウトプットの活動、とりわけ、議論は、一人で行うことはできません。「若者の政治離れ」が指摘される現代日本において、残念ながら、高校在学中に は、真摯に議論できる場を発見することはできず、新たにそうした場を作ろうとも試みましたが上手く行かず、こうした活動を十分に行うことができませんでした。そこで、大学では、社会問題や政治について真摯に議論できる場に属し、アウトプットの活動を積極的に行いたいと考えていました。
そうした場を探しながら進路選択に悩んでいた時、早稲田大学には、雄弁会というサークルが存在することを知りました。加えて、日本では珍しい政治経済学部という学部が設置されていることも分かりました。そこで、「大学4年間、このサークルとこの学部に賭けてみよう」と思い立ち、国公立や複数の私立を受験する同級生が多い中、同学部のみを受験し、入学。入学後、兼サーはせず、雄弁会のみに入会しました。
・初めて弁論を書いたときの感想を教えてください。
初めて弁論を「書いた」ときは、正直に言って、思ったよりも簡単だなと思いました(笑)。自分でもそれなりに文章を書くことはできたし、なによりも、先輩方が丁寧にサポートしてくださいました。しかし、初めて弁論を「した」ときは、思ったよりもはるかに難しかったです。ある程度分かりやすい文章を書くことはできても、説得的なレトリックを含めた文章を書くことは極めて難しいし、説得的な声調で文章を読むことはさらに難しい。けれども、まさにそこが論文などと異なる弁論の面白さであると思います。説明や理論を組み立てるだけではなく、声調やレトリックに極限までこだわる。弁論と他の文章表現手法との違い、ロジックに対する声調やレトリックの重要性といったことを、私だけでなく新入生の皆さんも体験していただけると幸いです。
・雄弁会の良さについて教えてください。
雄弁会の良さは、まさに、社会問題や政治について真摯に議論できる場であることだと感じています。会員は、幅広い分野に対するリサーチ力や洞察力を持っているだけにとどまらず、それぞれ特定の分野に対する深い知見を持っています。具体的には、大きな分野ですと、宇宙や教育格差、小さな分野ですと、個人情報保護制度や税制、薬価制度までさまざまです。その質は、通常の大学生をはるかに上回り、議論するのに申し分ないと自負しています。また、会員は全体で40名ほどおり、その量も議論するのに丁度いいと言えます。
また、議論だけではなく実際に行動できる場であることも、雄弁会の良さだと感じます。OB・OGが政治を筆頭に様々な分野でご活躍されているので、その人脈を生かせますし、雄弁会の名前を使えば、OB・OG以外にも様々な方をお呼びしてお話を聞いたり、そうした方の元にインターンに行ったりすることもできます。
・新入生へのメッセージをお願いします。
前述の通り、現役会員は幅広い分野に対するリサーチ力や洞察力、特定の分野に対する深い知見を持っていますが、新入生の皆さんはそうした能力を持っている必要はありません。ぜひ新入生の皆さんは、やる気を持ってきて、会室の扉を叩いてください。ただし、よく勘違いされるのですが、「自分の主張を押し通したい!」「相手を打ち負かしたい!」という“論破”の姿勢はよくありません。「相手の主張をよく聞き、自分の主張を修正しながら、よりよい結論を目指す」という“議論”の姿勢が理想です。新入生の皆さんはこの“議論”の姿勢を意識してほしいと思います。やる気と“議論”の姿勢さえあれば、後は、現役会員が新入生の皆さんを丁寧に育成します。
昨年8月に就任した幹事長職ですが、来年8月に退任するまで、残り半年となりました。卒業までは残り2年です。雄弁会と先輩方から様々なものをいただき、これから雄弁会と後輩に何を残せるかを常に考えています。残り短い雄弁会生活ではありますが、新入生の皆さんと議論し、実践し、共に高め合える日を楽しみにしています。新歓でお待ちしています。